Oracleの歴史|最強RDBMSの誕生と進化の軌跡

✅ はじめに

「Oracle Database(オラクル・データベース)」といえば、世界中の企業や官公庁で使われる
超高機能・高信頼性のRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)です。
しかし、その始まりは意外とシンプルで、「CIAのためのプロトタイプ」として誕生しました。
この記事では、Oracleの誕生から現在までの進化とターニングポイントを、技術史とビジネス史の両面から紹介します。

〇 1970年代:Oracleの原点は「CIAのプロジェクト」

  • 1977年:ラリー・エリソン(Larry Ellison)らが、Software Development Laboratories (SDL) を設立
  • 目的は、CIAのリレーショナルデータベース開発プロジェクト(代号:”Oracle”)に基づいた製品化

  • 1978年:最初のプロトタイプ “Oracle v1” を開発(内部使用のみ)

注目ポイント:IBMが開発していた関係データベースの理論(Coddの論文)を商用製品として世界で初めて具現化したのがOracleでした。

〇 1980年代:商用RDBMSとしての本格展開

  • 1980年:”Oracle v2″ をリリース(世界初の商用RDBMS)
    ※v1 は非公開だったため、v2が最初の公開版
  • 1982年:社名を Oracle Systems Corporation に変更
  • 1983年:UNIX版リリース
  • 1984年:Oracle v4でトランザクション制御と読み取り一貫性を実装

✓ 当時の他のDB(IBMのDB2など)と比べ、マルチプラットフォーム対応とSQL標準準拠が強み

〇 1990年代:エンタープライズ向けDBの王者に

  • 1992年:Oracle 7 リリース
    ストアドプロシージャ(PL/SQL)、トリガー、ロールなど大幅強化
  • 1995年〜:インターネット時代に合わせ、ネットワーク・分散DB機能を拡充
  • 1997年:Oracle 8 でオブジェクト指向DBの要素を取り入れ、XMLやマルチメディアに対応

✓ Oracle 7〜8は、官公庁・大企業向けミッションクリティカルな基盤として標準に

〇 2000年代:統合とクラウド戦略へ

  • 2001年:Oracle 9i リリース(i = Internet)
    • Real Application Clusters(RAC)導入
  • 2003年:Oracle 10g(g = Grid)リリース
    • 自動チューニング、パフォーマンスビューなどが登場
  • 2008年:Oracle 11g リリース
    • Active Data Guard、Data Compressionの強化

✓ この時期に自己修復・自己管理の方向へ進化し始める

〇 2010年代:買収攻勢とクラウド基盤の整備

  • Sun Microsystemsを買収(2010年) → Java、MySQLも傘下に
  • Oracle 12c(c = Cloud):マルチテナント(Pluggable Database)導入
  • Oracle Cloud Infrastructure (OCI) を本格始動
    → AWS、Azureに対抗するエンタープライズクラウド戦略

✓ 「オンプレミスの王者」から「クラウドでも戦える強者」へ転換期

〇 2020年代:自律型データベースへ

  • Oracle Autonomous Database 発表(自律型データベース)
    チューニング・パッチ・バックアップまでAIが自動実行
  • 高信頼性なクラウドDBとしてOracle Cloud + Autonomous DBのセット運用が拡大中
  • Oracle Database 21c では、JSONネイティブサポート、ブロックチェーンテーブル、マイクロサービス向け機能などを強化

〇 まとめ:Oracleは“最古にして最先端”のRDBMS

時期 主な進化
1977〜1980 世界初の商用RDBMSとして誕生
1990年代 企業向け基盤DBとして世界標準に
2000年代 自動化・分散・グリッド対応へ進化
2010年代 クラウド&買収戦略で総合プラットフォーム化
2020年代 AIによる自律型DBへ(Autonomous Database)

Oracleは、40年以上にわたり企業の「データを支える屋台骨」として進化し続けています。
その歩みを知ることで、今のデータベースがなぜこの形に進化してきたのかが見えてきます。